やほほ村

思ったことを書くよ

政策ディベートで肯定側が採る戦略の分類

この前のJDA大会でクリティークの試合をジャッジし、講評する機会を頂けました!

その試合で選手の方と話したときに、まとめておいたらいいかなと思ったことを書きます。

タイトルにもある通り、政策ディベートで肯定側が採る戦略の分類です。topicalかnon-topicalかとか、クリティークかそうでないかとかです。で、パターンごとにどう反論するかとか書いてみようかなと思います。

ちょっと雑だけど、書かないより書いたほうがいいってみんなも思うよね!

 

とりあえず分類してみる!

まずは見取り図

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分類してみたよ

topicalであるかnon-topicalであるかってのは、要は論題を肯定しているかしていないかってことです。

ひとつ注意として、kritikの場合はplanはないって前提でいきます

①論題肯定する、メリット・デメリットでプランあり

日本のディベートでよく見かけるやつですね。

ディベート甲子園とかはこのタイプの戦略を採ることを肯定側にルールとして義務付けています。下はディベート甲子園ルールの抜粋。

第2条 各ステージの役割
第1項 肯定側立論は,論題を肯定するためのプランを示し、そのプランからどのようなメリットが発生するかを論証するものとします。 否定側立論は,現状維持の立場をとるものとし,主に肯定側のプランからどのようなデメリットが発生するかを論証するものとします。

でもJDAとかは特に縛らずにディベーター各位に委ねっちょしているから、これ以外も出てくるってわけ。JDAルールも抜粋しとくか!

第3条 (側)
1. ディベートにおいて、二つのチームは、肯定側、否定側に分かれる。
2. 肯定側は、論題を肯定することをその役割とする。
3. 否定側は、論題の肯定を妨げることをその役割とする。
4. 論題の肯定、およびそれを妨げる方法は、ディベーターの議論に委ねられる

②論題肯定する、メリット・デメリットだけどプランなし

メリット出すのにプランがないってやつですよね。1AC終わったあとに、えっプランないの!?ってなるやつです。

例としてJDAASEAN通貨統合の論題のときの決勝戦があります。

リンクはトランスクリプトです。

https://japan-debate-association.org/wp-content/uploads/2015/12/s10ts.pdf

赤津:はい、ありがとうございます。で、プランの…政策の方をちょっと確認したいんですけれども…お聞きしたいんですが…政策の方で、いつ導入するとか、という話はありましたか。すぐですか?それとも…

瀬能:いやいや、私たちは論題を肯定しているわけですよ…

赤津:いやいや、明示していただかないと、対策ができないので…

瀬能:いやいや、今のままよりも、共通通貨を採用すべきである、というのが私たちの主張で、あの、プランが出なきゃいけない、というのは、なんか間違えた概念ですよね、日本のディベート界の。昔なんて出てなかったんですから。論題イコール…

赤津:ちょっといいですか。確認したいんですけど、メリットの議論の方に、銀行が統一されて一つになる、というお話がありました。中央銀行が統一されるって考えてよろしいんですか。

瀬能:あの…共通通貨制度になるとですね、そういう風になりますよね。

赤津:なくても大丈夫なんですね…プランに入っていなくても…。

瀬能:はい、そうです。それは私たちが想定したとおりです。

まあこんな感じの質疑も出てきちゃうのが見どころだよね。

③論題肯定する、kritik

topicalなk affですよね。政策として肯定するわけじゃないけど、アクションとしてであったり、言葉としてであったり、姿勢やスタンスとして肯定するぜってやつです。

JDAでも最近ちょくちょく出ているみたい。私もこのブログでこのタイプの原稿公開してたりします。

④論題肯定しない、kritik

untopicalでk aff。アメリカではまあまあ見られるみたいですが、日本でやるとゴン攻めだと思われることが今はまだ多いので、あいつ攻めるね〜ってなります。

ちなみにk affが、topicalです!!って主張をしつつ、topicalじゃなかったとしても別によくない??って主張もするなんていう、③と④両方を出してくる場合もあります。ってか、時間さえ許せばk affはそうするのがいいよね多分。

 

否定側はどう対応できるか

①論題肯定する、メリット・デメリットでプランあり

デメリットでもクリティークでも好きにやればいいよねえ

②論題肯定する、メリット・デメリットでプランなし

これはちょっとトリッキーで、「プランなかったら論題肯定できねえだろ!?!?」と思っちゃうこともあるけど、そこから考えてみましょう。

そもそもこの肯定側は何をしてるの

肯定側がプランを出す場合、論題が肯定されるメカニズムとしては下記の流れになっているはずです(多分)。

1. あるプランが導入された世界のほうが、いまより望ましいと肯定側によって証明される

2. あるプランが導入された世界は、論題が指している世界と一致している

この「あるプランが導入された世界」というのは、どんなプランを導入するかによって変わるわけで、たくさんの肯定側チームを集めたとき、プランが異なる肯定側同士では想定している世界も異なるわけです。

ただ、いろいろ異なるプランによっていろいろ異なる世界が想定されるとはいえ、そのすべての世界が論題が指している世界として捉えられるはずです。じゃなかったら論題肯定していることになりませんからね。

例えば、道州制を導入すべきという論題において、15個に分割するとか、8個に分割するとか、まあいろんな道州の切り分け方があるにせよ、それら全部が論題が指している世界(=道州制を導入した世界)であると言えるはずです。

要するに論題が指している世界というのはたくさんあって、そのグループに属している世界を一つ取り上げて、否定側が目指している世界よりいいじゃんというのが肯定側のしごとです。このとき、プランを提示するというのは、どの世界を取り上げるか選ぶということであるわけです。(否定側も現状維持にするか、CPを出すか、世界を選んでいるわけです)

これを踏まえると、プランを出していない肯定側への疑問としては「どの世界を対象に論じているんですか」ということに尽きそうです。そして、この点を色々考えると、プランを提示しない肯定側がとりうる立場は下記2パターンに収斂するんじゃないのかなと思います。

A. 論題が指している世界のすべてを擁護している

B. 論題が指している世界のグループの中に、肯定側が論じるメリットが発生する世界が最低でも1つは存在する

まあAは茨の道ですよね。Aなんてやると、仮説検証パラダイムになっちゃって首しめるだけだし。

(仮説検証パラダイム知らない人はこちらを読んでみるといいかもしれません: : https://nade.jp/wp-content/uploads/2020/09/paradigm41.pdf )

だからきっとBなんですよ。ってかまあそこは質疑で確認すべきです。

じゃあ否定側はどうすんの

Aのパターンを採る仮説検証ディベーターが相手なら、論題が指している世界のグループの中から全然よくない世界を取り上げてあげればいいでしょう。いわゆるカウンターワラントです。

Bのパターンであれば、下記2つがありそうです。

  • そんな世界は存在しないって言う
  • 肯定側が想定する世界において必ず生じるデメリットで戦う

まあ1つめはあんまりいい例も思いつかない(ごめんなさいね🐼)ので、2つめを説明してみます。

さっき掲載したJDAの質疑がめちゃくちゃよかったと思うので再掲。

https://japan-debate-association.org/wp-content/uploads/2015/12/s10ts.pdf

赤津:はい、ありがとうございます。で、プランの…政策の方をちょっと確認したいんですけれども…お聞きしたいんですが…政策の方で、いつ導入するとか、という話はありましたか。すぐですか?それとも…

瀬能:いやいや、私たちは論題を肯定しているわけですよ…

赤津:いやいや、明示していただかないと、対策ができないので…

瀬能:いやいや、今のままよりも、共通通貨を採用すべきである、というのが私たちの主張で、あの、プランが出なきゃいけない、というのは、なんか間違えた概念ですよね、日本のディベート界の。昔なんて出てなかったんですから。論題イコール…

赤津:ちょっといいですか。確認したいんですけど、メリットの議論の方に、銀行が統一されて一つになる、というお話がありました。中央銀行が統一されるって考えてよろしいんですか

瀬能:あの…共通通貨制度になるとですね、そういう風になりますよね。

赤津:なくても大丈夫なんですね…プランに入っていなくても…。

瀬能:はい、そうです。それは私たちが想定したとおりです。

この赤津さんの質疑はとても効果的だと思います。

肯定側はプランを出していませんが、仮想通貨を統合した世界をすべて擁護しているわけでもなさそうです。要は「仮想通貨統合するってなったら、十中八九このメリット発生するからいいでしょ」ってことですよね。さっきのBのパターン。

このままでは議論にならないので、否定側は「メリットが発生する世界であれば、必ず、例外なく、中央銀行が統一される」ことを確認しています。で、中央銀行の統一をトリガーとしたデメリットなりカウンタープランなりを提出する。

とにかくまあ、プラン出してない肯定側も何らかの政策上の変化は想定しているわけで、それを質疑でちゃんと確認して、デメリット普通に出せばいいんだと思います。

(出せるデメリットがなかったら乙……って感じですが)

③論題肯定する、kritik

まあこれは用意してきたkritik対策をぶつけるしかないっすね。下記の感じですかね。

1. anti-kritikする=クリティークをやり返す

2. メリット・デメリット方式のがよくないか!?って主張したうえでデメリットを出す

  2-a. 論題から想定される常識的なプランから発生するデメリットを出す

  2-b. 論題が想定する世界のいずれにおいても例外なく発生するデメリットを出す(ディベート専門用語愛好家はこれをgeneric DAと呼ぶらしいですよ)

anti-kritikってなんだよって感じの人は下の記事の6-4節を読んでみてください!(anti-kritikはカウンタークリティークともいいます)

canalundayo.hatenablog.com

④論題肯定しない、kritik

③でやるような議論はこの相手にも出せそうです。

ただ、相手がゴン攻めしている部分もちゃんと指摘しましょう。要は、「おまえルールやぶってないか!?」って言うってことです。

まあそれでも、ここまでゴン攻めする相手はルールを破らないといけない理由とかを議論で出してくるので、そのあたりは否定側も「なんでルール守らないといけないのか」をちゃんと言えるようにしておくといい気がします。

 

まあ今日はこんなところで、大会もおつかれさまでしたって感じですな🐟